
大阪府豊中市にお住まいの男性より、離婚公正証書作成サポートのご依頼をいただきました。
離婚後について女性のほうに、なかなかはっきりとしない(男性の説明からは分かりにくい)不安があるということでした。
ご依頼の段階でお二人で検討していただかなくてはいけないことも多く残っていて、相談をしながら進めたいとのことでした。
途中、なかなかお二人の協議が進まない期間もありましたが、3カ月ほどかかり離婚公正証書作成となりました。
協議が進まなかったことの一つではないかと思いますが、女性が希望されることには、公正証書に書けないことがありました。
以下で詳しく、説明いたします。
男性:40代
女性:40代
お子さん:三人(10歳・7歳・5歳)
※既に別居中
男性からお電話にて「電話相談希望です」と問い合わせがあり、その時間に対応が可能だったため、相談に入りました。
「離婚公正証書の作成を考えていて、話し合いを大まかにはしている」とのことでした。
お二人は、養育費について「お子さん三人まとめての金額」を考えられていたので、「(公正証書にするには)お子さん一人ずつの金額を決め、期間も一人ずつ定める必要があること」をお伝えしました。
他にも、離婚公正証書において決めるべきことをお伝えしました。
「離婚後について女性が不安を感じている」とのことでしたが、男性のお話からは、その不安の内容がはっきりとは分かりませんでした。
(不安を軽減するために、離婚公正証書が役に立ちます。)
女性のほうが収入が多いそうですが、「裁判所が公表している養育費算定表によって、養育費の金額を決める」とのことでした。
相談の際に、養育費を受ける方が不安に思われることとして、相手方が忘れずに毎月振込をしてくれるのかというのを聞くことがありますので、養育費の支払については「振込忘れを防ぐために自動送金手続きをする方もあること」をアドバイスをさせていただきました。
不動産は、女性名義・ローン債務者は女性です。
離婚後は、別居中の現在のまま、女性とお子さんたちがこの不動産に住み、「ローン返済は女性が行う」とのことでした。
電話相談から数日後に、「離婚公正証書作成サポートを依頼したいです」と、男性より連絡を受けました。
お二人で検討しなければいけないことがまだ多かったのと、女性側の不安が何なのかが伝わってこなかったため、「もう少し決まってからのほうがいいのでは?」とお伝えしましたが、お二人で話し合った結果、「相談しながら進めたい」ということで、依頼していただきました。
男性とのやり取りにおいて何度も聞かれたことは、「奥様が希望していることで、『養育費を減額しない』と、離婚公正証書に入れられるか」ということでした。
記載できないことを説明しましたが、「男性が再婚した場合、養育費の減額をしない」はできますか等の、養育費減額をしないことの記載についてのご質問が何度かありました。
「養育費を減額しない」ということは、離婚公正証書に記載することができません。
ご質問の度に、電話、メール等で記載できない理由を説明しましたが、説明している相手は男性なので、それが女性にきっちり伝わっていたのかは、こちらでは分からないことでした。
行政書士は相手方との交渉はできませんが、公正証書、協議内容等についてご質問に回答はできます。
男性からは、女性から直接電話をするかもしれないとお聞きしていましたが、それはありませんでした。
埼玉県・春日部公証役場のWebサイトの「Q&Aコーナー」にて、そのことを解説してありますので、URLを紹介しました。そこでは以下の記載になっています。
「養育費を支払義務者が減額できないようにできますか?再婚した場合養育費を支払いしないと記載できますか?」
- 「減額できない」とは記載できません。
養育費の額の変更は、物価の変動、父、母の再婚・失職、子どもの生活状況の変化、その他の事情の変更を考慮して、父及び母が協議することにより可能です。
- 「再婚した場合支払いしない」とは記載できません。
再婚した場合でも実子にあることには変わりはなく、養育費の支払い義務はなくなりません。ただ、上記のとおり、協議により養育費の額をゼロにすることはできます。
※養育費の額の増減は、公正証書作成後でもお二人で協議することにより可能です。協議で決められない場合は家庭裁判所の手続で決めることになります。
ーー引用:春日部公証役場公式ホームページ FAQs
これより詳しく説明はしていましたが、公証役場のHPに書かれているということで納得されたのか、こちらをお伝えしてから、そのご質問はなく、少しして合意ができたとのご連絡がありました。
女性が不安に思っていることについては、他にもあるのかがはっきりとしないままでしたが、「離婚しても、子が男性の相続人であることは同じ」ということをお伝えすると、男性が言われるには、女性の不安が少し払拭されるだろうとのことでした。
今回の離婚において慰謝料はなく、お子さんとの面会も、男性が会いたい時に会うという約束です。
以下で、今回の離婚公正証書の主な内容を説明します。
お子さん三人の養育費について、先述したように三人“それぞれの”金額と支払期間を決めていただき、「2年ごとに金額について協議する」という決め方をされました。
養育費の支払期間は大学を卒業するまで、専門学校・短大ならその卒業までというように、細かく決められています。
養育費の「自動送金手続き」も取られることになりました。
学費などの大きな費用、お子さんが怪我・病気をされた場合の費用は、その都度協議です。
女性の不安の一つだったようですが、それぞれの事情が変化していくこともあるので、2年毎に養育費の額について話し合いをされることになりました。
女性の希望があり、男性が、養育費支払期間中に亡くなってしまうケースを考慮して、お子さんたちに対し、そのような場合には「子ども一人あたり1,000万円程度の保険金」が入るような、保険への加入を約束され、離婚公正証書の内容に入っています。
このような心配をされる場合は、実際に保険に加入されてとなるのかと思いましたが、公正証書作成時点では、加入はまだで、これからのこととなっています。
この約束によっても、女性の不安は軽減されたようです。
女性名義の不動産に、離婚後は女性とお子さんたちが住み、ローンの支払は女性が行うこととなっています。
家財道具も、すべて女性の所有となります。
今回、お客様が負担された費用は、以下の通りです。
<当事務所への費用>
<公証役場費用>
公証役場に支払う費用は、公正証書の内容により計算されます。
離婚公正証書は、養育費などが“支払われる側”の人が作成を希望され、依頼されることが多いですが、今回のように“支払う側”の方から依頼されることもわりとあります。
離婚公正証書には書けることと、書けないことがあります。
今回の場合は、女性が希望されていた「養育費を減額しない」という内容は書けないものです。
内容によっては、公証人の判断により、書ける書けないが違うこともありますが、今回のこの内容は書けないことがはっきりしたものでした。
今回の離婚について、女性に不安があったようですが、きちんとした離婚公正証書を作ることによって、その不安は少なからず払拭できたのではないかと思います。
公証役場での公正証書への調印時も、不安をいだかれているようではなく、対応されていました。
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