
京都府にお住まいの女性より、離婚公正証書作成サポートのご依頼をいただきました。
詳しくは後述しますが、男性の金銭問題を理由に離婚され、男性は女性に対してと女性の母親に対しての、計2件返済するお金がありました。
1つの返済を終えてからもう1つの返済をするとなると、片方のお金の返済開始が遅くなってしまうため、男性が月々返済できる金額の範囲で、2つの返済を同時進行することをアドバイスしました。
男性:30代
女性:30代
※お子さんはいません。
男性の金銭問題を理由に、相談時点ですでに離婚されていました。
また、今回の離婚について慰謝料は発生していません。
女性からLINEにてお問い合わせがあり、日時を決めて当事務所まで来られました。
相談の翌日、公正証書サポートのご依頼をしていただきました。
ご相談内容としては、女性には「男性の事業のために女性が貸したお金の返済」と、「婚姻前の男性の借金を、女性の母親が立て替えてくれたため、その返済」について、離婚公正証書に入れたいというご希望がありました。
「男性の事業のために女性が貸したお金」については、女性が独身の頃に貯めていたお金を男性に貸したということで、男性から女性に返済をしていたものの、まだ残っていました。
こちらの返済については、離婚公正証書に入れられる内容です。
「婚姻前の男性の借金を、女性の母親が立て替えた」件についても、少しは返済していますが、まだ残っているという状況でした。
こちらはお金を貸したのは女性ではなく、女性の母親であり、母親は離婚公正証書の当事者ではないため、そのままでは、男性が母親に返済することを離婚公正証書に入れることは難しい内容です。
本来は、男性と女性の母親の間で、離婚公正証書とは別の公正証書を作成することがいいと思われますが、「お母さんができるだけ関わらないですむようにしたい」という女性のご希望もあり、原案では、お母様に借りた分をお母様の承認を得て、女性に返済するようにした内容を入れました。
(担当する公証人の見解によっては、認められない場合もあるということは、相談の時点で女性にお伝えしています。)
以下で、今回の離婚公正証書の主な内容を説明します。
上記、男性が行う2件の返済について、女性の母親への返済を終えてから、女性への返済を考えられていましたが、そうすると「(2件目の支払完了まで)かなり年数がかかってしまう」と懸念されていたため、「支払側が可能な範囲で、2件目の返済の月々の金額を少なくして、同時に始めるようにするのはどうか」とアドバイスさせていただきました。
具体的には、2つの返済額を足して男性が払える金額を決めて、同時に支払を開始し、返済が同時進行するようにするということです。
金額から考えて、このほうが1つを終えてからよりは早く支払が完了すると思われました。
お二人で話し合いをされ、お母様への月々の返済は決まっていましたが、それにプラスして、支払が可能な金額を女性への返済として、決められました。
なお、今回の返済に関する内容について、当初懸念していたように、女性がご指定の公証役場の公証人から、母親への返済を女性への返済とすることについてのご指摘がありました。
それは予測できたことでしたが、そのような場合でも、公証人はどのようにすればいいのかなどを具体的に教えてくださるものだと思っていましたが、この公証人はそうではなかったです。
今回、公証役場はお客様のご指定のところでしたが、こちらがいつもお願いしている公証役場であれば、このような対応ではなかったと思います。
どうすれば公正証書にできるかを、具体的に教えていただけたと思います。
いつもお願いしているから教えてもらえるのではなく、このような対応をする公証人ははじめてでした。
ご指定の公証役場は大阪市内でしたし、内容のことがあったので、当事務所がいつもお願いしている大阪市内の公証役場をすすめていたのですが、場所的なことから、お客様が今回の公証役場とされました。2つの公証役場はあまり遠くないのですが。
それで、公証人をされている時にお世話になっていた元公証人の弁護士に相談しました。
公証人が言われていることをお伝えして、どのようにすればいいか、1つの公正証書に、公証人が求めるようにきっちりした法的根拠がある状態でできるのかを教えていただきました。
教えていただいた内容で原案を公証人に出し、そのようになりました。
1つの公正証書にできてよかったと思います。
お母様への返済も女性へ返済する内容にはなっていますが、お母様も公正証書の当事者となるため、公正証書調印時には、公証役場に行って署名捺印することになります。
お母様は平日はお仕事のため、公証役場に行くのが難しいとのことでしたので、私(大石)が公正証書の代理人として、委任状により公正証書への署名捺印を行いました。
女性の名義の不動産で、女性がローン返済している婚姻中にお二人がお住まいだったマンションに売却ができるまで男性が住むこととし、その賃貸料を、期間を決めて男性が女性に支払うことを決められました。
支払期間を「いつからいつまで」と記載しないと強制執行の対象にはならないため、不動産の会社から聞かれていた売れる目途の月までとして、決められました。
売れるのが上記以降になる場合は、その先のことは協議して決めることとし、それより早くなった場合は、男性は速やかに、その不動産から退去することも決めています。
マンションの売却代金はローンの残務返済、売却に伴う費用に充て、残りはすべて女性のものとなります(財産分与)。
月々のマンション管理費は、女性の口座からの引き落としになっていますが、男性が女性に支払う賃貸料は、管理費の一部負担も考慮して、二人で決められた金額だそうです。
今回、お客様が負担された費用は、以下の通りです。
<当事務所への費用>
<公証役場費用>
公証役場に支払う費用は、公正証書の内容により計算されます。
詳しくは当事務所にご相談ください。
以上、今回は、1つの離婚公正証書としてまとめるには難しい部分もありましたが、無事にまとめることができた事例でした。
かなり前に、全く同じではないですがよく似た案件があり、その時の公正証書案文を参考にして原案を作成したのですが、公証人の判断により、今回はそれでは難しいということでした。
金銭問題が理由の離婚では、「お金の返済が滞りなく行われるかどうか?」が大きな不安になることでしょう。
強制執行の力を持つ公正証書を作成することで、返済に関する不安を払拭することができると思います。
→ 離婚協議書・公正証書を作成するなら『行政書士オフィス大石』