
子どもの養育費がほしいと、30代の女性から連絡をいただき、公正証書作成についての相談事例です。
HPからのお問合せで公正証書を作成する方の多くは、離婚するご夫婦のため「離婚ですか?」と聞いてみると、「結婚はしていないです。」とのことでした。
また、同居していたわけでもなく事実婚関係でもないようでした。そのため、要望や状況を詳しく聞かせていただきました。
現在の子どもの年齢は2歳で、相手の方は現在少し遠いところに住んでいて、毎週末に子どもには会いに来るものの、養育費や生活費を入れてくれたことはないようでした。
また、つきあっている時に彼の車のローンの債務者になっていて、別れるタイミングで車は売却したが、ローンが40万円程残ったという状態でした。
そのため、今まで払ってもらっていない養育費はもういいけれど、今後の養育費と車のローンの残債を払ってほしいし、払ってもらえない時は強制執行できるようにと考えているようでした。
公正証書にするには、色々とクリアしないといけない問題があるため、詳しく質問していきました。
公正証書にするためには、まずは下記のことが必要です。
公正証書は強制執行ができる書面であり、「契約書」です。
例えば、家にインターネットを引く時に様々な条件や料金の書いてある契約書にサインするのと同じで、契約書は、お互いの同意が無ければ有効なものにはなりません。
ただ、公正証書は一般的な契約書である「私文書」とは少し違い、公的機関である公証役場で作成される書面で「公文書」になります。
私文書は、「私人間(個人対個人、法人対個人、法人対法人 等)」で作成される書面ですが、公正証書(公文書)は公証人が作成する書面であり、一般的な契約書より証拠能力の高い書面です。
公正証書の場合、当事務所などにご依頼いただいて作成する場合でも、調印時に代理人をたてる場合を除いて基本的に、調印に一度は公証役場に行く必要がありますし、お二人が同意できていない内容では作成できません。
本人確認の公的書類を提出する必要もあります。
まず、強制執行できるものは「お金の支払い」についてのみです。
例えば、貸している車をいつまでに返すなどの約束を公正証書にいれたとしても、返してもらえない時は書面によって強制的に返却されるような効力は持っていません。
また、お金のことであればどんな事でも強制執行できるのかというとそうではありません。
強制執行能力を付けるためには以下の3つの条件があります。
養育費であれば、
具体的にいうと、毎月何日までに、〇万円を〇〇口座に銀行振込みにより支払うと決め、その支払が、平成○○年8月~平成○○年3月までといった期限を設けることにより強制執行能力を持たせることができるのです。
※相手が消息不明や支払能力が全くなくなっている状態だと強制執行は難しくなる場合があります。
今回の相談者は、同意を得るポイントが明確になったため、子どもの父親である男性との話し合いで、同意を得られ、公正証書を作成することができました。
車のローン残額についても、毎月少しずつ、債務者である女性に、返済されることも決められました。
公正証書を作ろうと思っても、決めなければならないことや決めたいことが明確になっていないと、同意が得にくい可能性はあったり、話し合いがスムーズにいかないことがあります。
公正証書作成を考えたら行政書士に相談するのをおすすめします。