離婚公正証書を作ることができなかったケース~理由は同意を得られなかったこと~

今回の離婚相談内容

「もう離婚はしたけど、不動産の連帯保証人となっているので、不安だから公正証書の相談をしたい。」と事務所に来られた30代後半女性が離婚公正証書を作ることができなかった事例です。

※離婚公正証書は、離婚前に作成する方が大多数ですが、離婚後に作成する方もいます。

女性が公正証書を作ろうとしている理由は、不動産の連帯保証人を外れられないことが一番でした。

お二人で購入された元ご主人名義の不動産は、離婚後、ご主人の所有としてローンも返済するということでした。

連帯保証人についての経緯を聞いてみると、ローンの支払い年数が残り28年ぐらいあり、残債もまだまだ残っていて、住宅ローンを組んでいる銀行に問い合わせてみても、連帯保証人から外せないという回答だったそうです。

連帯保証人を外せる可能性があるとすればで、「住宅ローンの借り換えをしてもらう」「残債がある程度まで減った段階で可能性がある」と聞いたようです。

そのため、住宅ローンの借り換えをしてほしいと、元ご主人に伝えていたそうですが、元ご主人からは、「あたってみたけれど、無理だった。他をさがしてみる」ということで、不安だということでした。

それで、公正証書の作成を考えたそうです。

公正証書に入れたいと思われていた内容は以下でした。

この女性が公正証書に入れたかった内容

  • 住宅ローンの借り換えができるように借り換えできる先を探してほしい。
  • 借り換え先を探していることが分かる経過を教えてほしい。
  • 借り換えができなかった場合、定期的に連帯保証人を外せるかを銀行に確認してほしい。
  • 何らかの事情で女性が連帯保証人として費用負担するような事が起きてしまった場合、女性が負担した金額を請求すること。その際、負担した費用を分割での返済となる場合は公正証書を作成するということ。
  • 一緒に住んでいた時に飼っていた犬は男性が引き取ったが、犬に時々会いたい。

そして、相談時のお話しでは、最近ご主人と話しをして、同意してもらっていると言われていました。

それでも、原案が完成してから元ご主人に確認してもらうことも、公正証書作成について、再度確認をしていただくことが必要であることをお伝えし、数日後、ご依頼となり、原案の作成を進めることになりました。

離婚公正証書を作ることができなかった1番の理由

離婚公正証書を作成できなかった理由は「元ご主人の同意を得られなかったため」でした。

 

同意がないと離婚公正証書が作れない理由

離婚公正証書というものは、金銭が絡むことに対して、強制執行できるなどの強い効力をもつ書面です。

ただし、作成をするには、お互いが同意をした内容であること。また無理な内容ではないこと。更に、お二人が公証役場で公証人の目の前で調印しなければなりません。

※調印は代理人を立てることはできますが、代理人に委任する方は、念入りに原案と公証人による案文を確認

 していただき、委任状に署名捺印していただきます。

 

要するに、「自分で勝手に決めた内容で離婚公正証書を作成することはできない」ということです。

公正証書でない離婚協議書など私文書の契約書でも、相手方の同意がなければ署名捺印はもらえないのは同じです。

 

本当は同意をもらっていなかった可能性が浮上

今回の依頼者である女性のお話しでは、公正証書の作成及び内容に対しての同意を得ており、原案完成後に元ご主人に確認をしてもらうということにも同意をしているということでした。

 

ただ、原案完成後の元ご主人に確認してもらう段階になると、「半年前に同意をもらっているから進めてもいいですか?」という要望があったのです。

内容に同意を得ていないのに、公証役場に行って調印をしてもらうことは無理ですし、もし公証役場へ行って調印をするとなっても、その場で拒否されれば公正証書は作成できません。

 

だからこそ、原案の段階での同意を得るのが重要なのです。その前に、お二人が同意された内容で原案を作成します。

同意してもらっているというお話しが違っていたようで、相手が原案で内容確認をせずに進めたいという要望がこの段階であがってきたので、こちらにお伝えになっていたことが事実ではなかったことがわかりました。

このままでは作成できなさそうだと感じ、再度お話しをして確認してもらってくださいとお伝えし、元ご主人に公正証書の原案の確認をしてもらうことにしました。

 

その結果、「原案の内容については同意できない」という回答が返ってきたようで、内容の見直しが必要になりました。

公正証書を作成するには、女性に、ご主人はどんなところが同意できないのか確認していただく必要があり、話し合っていただきました。

 

それで返ってきた返答は、「そもそも公正証書を作るなんて聞いてないし同意もしていない」ということでした。

 

この状態では、女性がどんなに作成をしたいと思っても、離婚公正証書を作成することはできません。

こういった理由から、女性は公正証書を作成したいけれど、同意を得るまでは作成ができない状態になったのです。

最初の相談時に、相手方の内容と公正証書作成についての同意が必要だと何度も説明したのですが、半年前に

二人でお話しはされたのでしょうが、相手が同意したと思いこんでいたのではないかと思われます。

半年前というのも、相談時のお話しでは、この間話し合ったという説明でした。ただ、作成して安心がほしいということだけで、事実をお伝えいただけないとこのようなことになってしまいます。

離婚公正証書を確実に作成するために必要な3つのこと

  • 公正証書に入れる内容は、お二人が同意していること
  • お互いにとって無理な内容にしないこと
  • 作成前にしっかりと話し合うこと

これら3つのことをクリアしていれば、公正証書の作成はスムーズに進みます。

 

ただ同意を得ているからといって、テンプレートで作成するのは非常に難しいので、おすすめはできません。

ぜひ、公正証書に入れる内容についてや書き方は、行政書士等に相談していただくことを推奨します。

 

テンプレートを使って自分で離婚公正証書を作ろうとしたけど、書いてあるものは決めないといけないと思い、無理にその内容を残している方や、テンプレートにない内容はどうしたらいいかわから困っていた方も多くいまらっしゃいます。そういった方からの相談もよくあります。

もし、テンプレートで作成を考えているのであれば、一度下記関連ページをご覧ください。

⇒ 公正証書の作り方がわからなくて相談に来られた事例

この事例の担当

行政書士 大石明美 行政書士オフィス大石代表

神戸にある大学の文学部英文学科卒業。
販売関係の仕事、日本語教師を経て、2008年12月10日行政書士オフィスを開業。
離婚等の公正証書作成サポートを開始。
2014年 大阪府行政書士会第65回定時総会にて「会長表彰」を受賞。
北海道から沖縄まで、全国各地から離婚公正証書作成サポート、別居公正証書作成サポート等のご依頼を受けています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加