
離婚をすることになったので、話し合いの結果をまとめて公正証書にしようとしていたんですが、作れなかったので作成のサポートをしてほしいと連絡があり、依頼を受けることになった事例です。
奥様が離婚に関する公正証書の作成していた流れは下記の通りでした。
ここまでは進んでいたのなら、公正証書の作成手順自体は間違えていないですが、内容に問題がありました。
離婚協議書もそうですが、公正証書を間違った作成手順で作ろうとする方がいます。
それは、「相手もこれで大丈夫だろうと思う内容で作ること」です。
そもそも、公正証書は強制執行能力をもった公文書のため、どうしても支払ってほしい養育費や財産分与など、これぐらいが相場だし、相手も払える金額だから大丈夫だろうと自分で内容を決めようとする人がいます。
これは間違いです。
このままでは公正証書を作成することはできません。
離婚の公正証書を作る場合、「必ず相手の同意が必要」です。
ただ、間違えるのは仕方ありません。
なぜなら、「相手が無理なく守れる内容」「相場の範囲内におさまる内容」で離婚協議書を作成して公証役場に持っていけばいいと説明しているWEBサイトがあるからです。
今回もそのWEBサイトをみて勘違いしていたこと、またテンプレートの内容が、この依頼者には必要ない情報や、この依頼者にとって必要な情報がなかったっため、公正証書の内容となるもの離婚協議書にしていたけれど、間違っていました。
公証役場へ行ったけど作成できなかったことが容易に想像されました。
この依頼主が公正証書を作成できなかった理由は、結論からいうと、おそらく公証人に説明した内容と、文章にしていったものが違っていたりしたことにあると思います。それに加え、相手の同意を得ていないことです。
公正証書に入れたかった内容は下記の通りでしたが、公正証書の作成するに至れなかったポイントに(★)を付けました。
この★のところで何がどのようにダメだったのかが、公正証書の作り方において非常に重要なポイントなのです。
それでは少しだけ説明させていただきます。
金額は同意が得られていましたが、テンプレートには子どもが二十歳までとなっていたので、そのまま使って記載した。
実はここに実際には追記が必要でした。
詳しく聞くと、お二人の間で、子どもが二十歳になるまでだけれど、子どもが大学に進学した場合は大学卒業までは養育費を支払ってもらうことは合意ができていたようです。
ただ合意できていたものの、書くとは思っていなかったこと、書いたとしてもその文章の適切な書き方が分からず、テンプレートにはなかったため、書かないでいたようでした。
それでも、公証人にきちんと説明できれば大丈夫ですが、養育費の合意はできていても、その他の合意ができていないことで、説明をうまくすることができなかったのだと思われます。
内容を伝えられないまま公正証書にしてしまうと、合意通りの養育費の内容にならない公正証書になっていました。
テンプレートには、「甲は乙に対し財産分与として金●●円を支払う」と書かれていたため、財産分与は現金でないといけないと勘違いしていたため、なんとなくの金額をご自分で作成した書面に書いていました。
ただよくよく要望をきくと、子どもの送り迎えもあるので車を財産分与としても欲しいと考えていたようでした。
書けること、および書き方がわからなかったため、そのままにしていたようでしたので、合意をとってもらった上で、正しく要望通りになるようしました。
ご主人は住宅ローンを使って、戸建てを購入していたため、住宅ローンが残った状態でした。ただテンプレートには住宅ローンのことなど触れていません。
実際のところは、子どもの学校のことがあるので、今の家に奥様と子どもは住み続けて、ご主人は引越しが住宅ローンは主人に払ってもらうことが決まっていました。
ただ、この内容を公正証書に入れようと考えていなかったのです。
公正証書には約束をしたことを文章にしておくのは非常に重要なことなのです。
不動産に関しては、人により背景や事情などが細かく分かれているため、テンプレートでは難しいと思います。
更に、住宅ローンを払ってもらえなくなったり、不動産の所有権や名義はご主人のため、いつ売却されるかわからないことに不安は残るはずです、更には住宅ローン完済後どうするのかが全く分かりません。
この方も、離婚後も子どもと住んでいいということは、ご主人に言われていたので、それで安心しきっていた
ようです。
ここは要注意です。
また上記所有権移転および不動産に係る債務及び納税義務等の移行の完了を条件に、甲は上記不動産から速やかに退去することとし、その期限は離婚届届出日までとする。
引用:テンプレートの内容
ご主人が万が一の事故などで、他界してしまった場合、養育費等の支払いが止まってしまうことになるので、困ると考えていました。
また学資保険の支払いもあるため、養育費の支払いが終わるまでは、学資保険の支払い続けてもらうことや、
それまでは、ご主人の生命保険の受取人の変更をしてほしくないと考えられていたので、ご主人に合意をもらわれ、公正証書の内容に入っています。
離婚の公正証書のテンプレートには保険についての文章がないため、入れられないものだと思っていたようでした。
これに関しても約束を文章にすることは公正証書の作成において非常に重要なことなので、入れる内容でした。
離婚に関する公正証書の作り方を調べて、テンプレート通りに作成したとしても、二人の合意内容や要望通りの内容になる公正証書を作成できる確率は非常に低いです。
テンプレートは、相当知識がある上での使用でないと難しいと思います。
本来、公正証書というのは、強制執行能力を有しているだけでなく、お互いの約束を文章として残しておくものなので、内容にはある程度の自由さがあり、合意した内容であれば大抵のことなら入れられます。
だからこそ、テンプレートで作る必要もなければ、テンプレートでは思い通りのものができない可能性が高いわけです。
それぞれの離婚の状況において決めること、また同意することは本当に多種多様なため、テンプレートを利用した公正証書の作り方は適切ではないと言えます。
要望通りの離婚公正証書にするためには、できる限り離婚公正証書の作成サポート経験の豊富な行政書士に相談するのがおすすめですよ。
作成サポートが豊富かどうかは、作成サポート事例などがホームページにたくさん入っているかどうかで判断できると思います。