(コラム)相談などからの離婚の公正証書に書けないこと、書けること等-事例あり

離婚の公正証書に書けないこと、書けることについて

離婚の公正証書を作成しようと考えている方から、離婚の公正証書に「この内容は書けますか」というご質問はよくあります。

あくまで、難しい判断が必要なことは、公証人の判断によることになります。


今回は

  • 離婚の公正証書に書けないこと
  • 離婚の公正証書に書けること(質問の多い項目について解説)
  • 「公正証書に入れる内容は細かく決めない方がいい」と思われていた大阪市に住む女性の相談事例

について、大阪で離婚公正証書の作成をサポートする行政書士のオフィス大石が解説します。

離婚の公正証書に書けないこと

離婚の公正証書に書けないことで、ご質問があったことは以下ですが、多くはありません。

 

  1. 養育費を支払わない
  2. 養育費の額の変更をしない
  3. 子どもとの面会を認めない
  4. 養育費が滞ったら、子どもとの面会をさせない

 

その他にも、以下のようなこと等は書けない内容です。

 

  • 離婚時年金分割の請求をしない
  • 利息制限法を超える金利
  • 公序良俗に違反すること、違法なこと

1.養育費を支払わない合意

養育費は、子供を育てるためにかかる必要な費用になります。

 

子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる費用ですが、その支払いについて両親の間で養育費をどちらかが支払わないと決めても、養育費は子どもの権利でもあるので、子どもから請求できることになります

 

そのため、養育費を支払わないということは公正証書に記載できません。

2.養育費の額の変更をしない

  • 物価の変動
  • 両親2人、それぞれの再婚
  • 収入の変動
  • 事情の変更

 

などがあった場合で、支払う方が決められた金額の支払がどうしても難しくなった場合等、養育費の金額を変更することは可能とされています。(判例があります)

 

そのため、離婚の公正証書に「養育費の金額の変更をしない」という合意は、記載できません。

3.子どもとの面会を認めない

面会は、離婚後に養育監護をしない方の親が、子どもと面会を行うことです。

 

面会をする権利は、親が子と面会する権利でもありますが、子どもが親に会いたいという権利でもあります。

 

そのため、両親だけでそのように決めようと考えても、公正証書に「子どもとの面会を認めない」という取り決めは記載できません。

4.養育費が滞ったら、子どもとの面会をさせない

上記3との関連しますが、面会交流について離婚の公正証書の内容を検討する際、養育費が継続して支払われているかどうかを、面会交流できるかどうかの条件に考える方がいらっしゃいます。

 

しかし、面会交流と養育費については、別のこととなります。

養育費を条件として面会を認めることになる「養育費が滞ったら、子どもとの面会をさせない」などの取り決めは記載できません。

離婚時年金分割の請求をしない

年金分割は、年金を受け取るようになった時に、夫婦の婚姻期間中に納付した保険料に応じて厚生年金を分割し、年金分割に該当する部分を多いほうから少ないほうに、分割されるものです。

その手続きは、離婚から2年以内に行わなければなりません。

 

年金分割は公的請求権になり、公正証書に「離婚時年金分割の請求をしない」と記載することはできません。

三号分割に該当する場合は、一方の手続きによりできます。(離婚から2年以内)

 

 

以下は、ご質問を受けることはほぼないですが、書けないことになります。

利息制限法を超える金利

たとえば、慰謝料等を分割で支払う場合、金利、遅延損害金の金利を定めることがあります。

 

利息は「利息制限法」という法律によって決められているため、それを超える金利などは、公正証書に記載することはできません。

公序良俗に違反すること、違法なこと

  • 公序良俗に違反すること
  • 違法なこと

 

これらも公正証書に記載することはできません。

離婚の公正証書に書けること|質問の多い項目について解説

離婚の公正証書に書けるか書けないかを迷われることの多い項目として、当事務所がご質問を受けるものがいくつかあります。

 

その中で、離婚の公正証書に書けることについて説明します。

子どもの面会についての取り決めについて

  • 「子どもとの面会時など、再婚相手、交際相手と子を会わせない」
  • 「〇歳までは、午後〇時までに面会を終える」
  • 「面会時に高価なものを買い与えない」

 

これらの面会交流に関する取り決めは、お2人の合意があれば、公正証書に記載することができます。

養育費の支払方法について

  • 「養育費の支払いについて、銀行の自動送金を申し込む」

 

養育費の支払い方法についても、離婚の公正証書に記載することができますが、銀行の自動送金の手続きをするのは、支払う方が行わなければなりません。

大学に行かない場合の養育費について

養育費の支払いについて、子どもが大学卒業まで行うと決めている場合、もし大学にいかなかった場合はどうなるのか、と考える方がいらっしゃいますが、

養育費の支払いを大学卒業までと決めても、ただし書きで、

 

  • 「満20歳のときに大学に進学していない場合は、養育費の支払いを満20歳の誕生日の属する月までとする」

 

のように記載できます。

その場合は「満20歳に達する日の属する月(令和〇〇年〇月)まで」のように、年月を明記する必要があります。

養育費を子どもの年齢とともに、養育費の金額を変更していくことについて

養育費の金額を、子どもの年齢とともに変更する取り決めを公正証書に記載することができます。

 

その場合は、子の年齢にあわせて、

 

  • 「令和〇年〇月から令和〇年〇月までは、1か月金〇〇万円」
  • 「令和△年△月から令和△年△月までは、1か月金△△万円」

 

のように、それぞれの段階について、期間を確定しておく必要があります。

養育費を支払う方の生命保険の受取人変更について

「万が一、養育費を支払う方が、養育費の支払期間中に亡くなった場合」
を考えられ、次のようなことを合意され、離婚の公正証書に記載することがあります。

 

「離婚後、夫が加入する生命保険の受取人を妻から、子どもに変更し、養育費の支払終期まで解約、受取人変更をしない」

 

 

以上、離婚の公正証書に実は書けることについて解説しました。

 

次の項目では、実際に当事務所に依頼のあった
『「公正証書に書く内容は細かく決めない方がいい」と思われていた大阪市に住む女性の相談』
の事例を紹介します。

【事例】「公正証書に書く内容は細かく決めない方がいい」と思われていた大阪市に住む女性の相談事例

今回の離婚相談内容

30代前半で、小さいお子さんが1人ある大阪市在住の女性からお電話でお問合せがありました。

 

ご夫婦で、カウンセラーにより、関係修復にむけてカウンセリングを受けられていたそうですが、結局、離婚することになったということです。

 

女性は、”離婚するときは、お互いの約束事を公正証書に残しておくといい”と聞かれていたようで、離婚協議書のように、合意内容をまとめたものをご自身で作成されていました。

 

お問合せ時には、「大阪市にある公証役場へ持っていけばいいだけなのですが、ちょっとお聞きしたいこともあるし、相談時に私が作った書面をチェックしてもらえないでしょうか?」とのことでした。

 

離婚協議書のチェックは、相談とは別サービスとなり、初回1時間の無料相談、そしてそれ以降の有料相談でも対応できないこと、作成された書面を拝見して、ぬけている項目などをお伝えすることまでは相談時に対応できても、具体的に「ここをこのような文言に」というようなサービスは、離婚協議書チェックサービスとなり、別サービスになることをお伝えしておきました。

 

離婚協議書チェックサービスは、時間をかけて、じっくり見せていただき、修正すべきところ等をお伝えするものであり、短時間に簡単には行っていないものなのです。

養育費についても「漠然と決めておいた方がいい」という間違いがあった

最初の相談は、女性1人で来られました。

 

女性の説明では、「公正証書を作成することについて、主人の了解はもらいました。話し合いはできるのですが、主人は頭がきれるので、話し合いをリードされてしまい、自分の意見をうまく言えなくなってしまうのです」ということでした。

 

それでも、ご主人は全然話し合ってくださらないわけではなく、怒ったりすることもなく、普通に話し合いはできるそうです。

 

作成されたという書面を一応見せていただいたところ、メインとなる養育費についても、月々の金額は決められているものの、漠然としたところがあり、公正証書にするには、確定すべきところが決められていなかったり、書面からは意味がわからないところが数か所ありました。

 

そのあたりをお聞きすると、カウンセラーの方から「公正証書は細かく決めず漠然と決めたほうがいい」とアドバイスを受け、そのようになっているということでした。

 

そのカウンセラーは、士業と兼業のカウンセラーではなく、公正証書の内容についてよく知らないわけで、どうして公正証書についてアドバイスするのかは理解できませんが、お話し合いがソフトに進むようにそのように言われたのかもしれません。

 

今のまま養育費の支払終期や支払方法などについて漠然としたものでは、強制執行の効力を持つ公正証書は作成できないことをお伝えし、ご主人にそれを説明していただくこと、2人で決めていただくべき項目等をアドバイスして、初回相談は終了しました。

2回目の相談時、漠然としていた部分を男性と女性の2人で明確にされた

後日、女性からお電話があり、公正証書作成サポートをご依頼いただきました。
やはりご主人にはうまく説明できず、女性が言われるには、ご主人は「漠然と決めればいい」と言っているとのことでした。

 

それで、「再度2人で相談に行きたいです」ということでしたので、私からご主人に公正証書について、どのように決めておく必要があるか等の説明はできるけれど、合意内容についての交渉はできないことをお伝えし、予約を入れさせていただきました。

 

そして、2回目の相談には2人で来られました。
男性は、きっちり説明をすればすぐにわかっていただけ、「確定することが必要であれば、確定します」ということで、決められてなかったところもその場でお2人で決めていただきました。

 

初回見せていただいた書面で、意味がわからなかった光熱費と養育費の合算になっているところもローン契約上からそのようになっていることがわかりました。

 

また、男性は、その他の細かいところ等は、「基本的には奥さんの希望通りに書いてもらって、それを私が見て”これはちょっと……”と思うところは、話し合います」と言われていました。

「細かく決めない方がいい」という思いこみを解消し、公正証書を作成

最初は、「何でも漠然と決めていた方がいい、細かく決めない方がいい」と間違って教えられたことからの合意内容がありました。

 

漠然としておいたほうがいいこともありますし、漠然としか決められないこともありますが、養育費については、お支払いが発生し、強制執行ができる公正証書にするためには、確定しなければならない項目があります。

 

また、契約書は誰が読んでもわかるものでなければなりません。

 

今回は、公正証書を作成上の必要部分をサポートさせていただくとともに、このケースは、不動産のローン契約内容の関係で、光熱費と養育費の合計金額を決められるという大変複雑な決め方になっていましたので、それを誰が見てもわかる文章に原案として作成させていただき、その内容の公正証書ができました。

 

最終的に、養育費をきっちり支払ってもらいたい、婚姻中暮らしていたマンションに住み続けたい、という女性の気持ちが反映された内容で、男性の合意の上、公正証書の作成サポートを行いました。

公正証書は、公証人によって、書けること・書けないことの判断は異なる場合がある

法律面から見て、判断が難しい場合等、公証人によって、書ける、書けないの判断が異なる場合もあります。

 

  • 離婚の公正証書に書けないこと
  • 離婚の公正証書に書けること(質問の多い項目について解説)
  • 「公正証書に入れる内容は細かく決めない方がいい」と思われていた大阪市に住む女性の相談事例

 

について、大阪で離婚公正証書の作成を代行する行政書士のオフィス大石が解説しました。

離婚の公正証書に書けるのか、書けないのかをご自身で判断できない場合は専門家に依頼することをおすすめします。

 

オフィス大石では、離婚の公正証書の作成をサポートしています。

「離婚の公正証書に何が書けて、何が書けないのかわからない」とお悩みの方は、オフィス大石までご相談ください。

公証人による判断が必要となる場合は、ご相談時に回答できないこともあります。

 

初回相談は1時間まで無料で対応させていただきます。

 

全国対応可能 行政書士オフィス大石の「離婚公正証書作成サポート」の内容を見る サービス内容はこちら

 

この事例の担当

行政書士 大石明美 行政書士オフィス大石代表

神戸にある大学の文学部英文学科卒業。
販売関係の仕事、日本語教師を経て、2008年12月10日行政書士オフィスを開業。
離婚等の公正証書作成サポートを開始。
2014年 大阪府行政書士会第65回定時総会にて「会長表彰」を受賞。
北海道から沖縄まで、全国各地から離婚公正証書作成サポート、別居公正証書作成サポート等のご依頼を受けています。

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