
離婚時年金分割の合意分割についての手続きの合意を記載した公正証書でお話した、依頼者様のお話を少し深く掘り下げてみたいと思います。
今回、当事務所にご相談の予約のお電話をくださったのは、依頼者のお姉様でした。お話を伺うと「妹が離婚にあたり公正証書を作成しようとしているものの、その内容が適切ではないと思うので、一度専門家に相談したい」ということでした。そこで、依頼者とお姉様に事務所へお越しいただき、お話を伺うこととなりました。
公正証書に記載しようとされている内容がどのようなものかをお聞きしたところ、養育費について、「離婚後も元夫の給与が入る預金口座を元妻が管理する」というような内容になっていました。
この内容では、養育費としてのお金の実際の動きが元夫から養育監護を行う元妻へとなっていないため、公正証書における強制執行の対象とはなりません。
また、この内容であると、離婚後も離婚前と変わらないようになり、また、どちらかが再婚などを考えた場合に問題になってくると思われます。
元夫が給与が入る口座を変更すれば、元妻は、養育費を受け取ることが難しくなるかもしれません。
こうした内容は現実的ではなく、この決め方では、公正証書を作成しても、養育費について強制執行ができる書面にはならないことを説明しました。
当事者の妹さんは、強制執行ができることで公正証書作成をお考えでしたので、強制執行を可能とするには、どのように決めればいいかをアドバイスし、それをもとにご主人とお話合いをされ、公正証書作成へとなりました。
離婚に至る経緯はそれぞれのケースで異なっていますし、合意内容もそれぞれ違います。
離婚の原因がどちらにあるのか、婚姻の期間がどのくらいなのか、また互いの経済状況などによっても、離婚協議書や公正証書に記載する合意内容は異なってくると思います。
インターネット上では、離婚協議書などのテンプレートが出ていたり、具体的な書き方の事例が紹介されています。これらは一見すると非常に有用そうに見えますが、こうしたものは画一的な内容であり、基本事項だけのシンプルなものでしかありません。
こうしたものを使ったとしても、それぞれの事情に沿った内容に対応することは難しく、内容に不足があったり、反対に不必要なものが記載されてしまったりと、合意内容がその通り記載された適切な契約書にするのは簡単なことではありません。
今回のケースでも、離婚協議書を自分で作成しようとした依頼者である妹さんは、「離婚協議書を作り公正証書にすれば、強制執行ができるもの」と思われていて、実際にお姉様からのご相談がなければ、公正証書が完成するまでに不必要な時間を要したり、現実的でない内容によって離婚後に新たな問題に直面していたかもしれません。
公正証書の内容に関しては、公証人が作成されるので、法的におかしなものができることはありませんが、離婚協議書・公正証書を有効なものとし、適切な形へと落とし込んでいくためには、やはり専門知識をもつ行政書士などに相談し、公正証書なら、公証役場に行く前の段階で吟味しながら内容を作成していくことが、最も堅実な方法であるといえるでしょう。