
結婚18年目で、3人の子どもを連れて、近々夫と別居します。別居中の婚姻費用については話し合って決めましたが、金銭面でだらしない夫がきちんと支払ってくれるか、とても心配です。公正証書で、別居中の婚姻費用を取り決めることができますか?
離婚の決断の前に、まず少し離れて、お互いの気持ちをクールダウンさせたい。そう考えて、別居をされるご夫婦は少なくありません。しかしながら、先立つものとして、生活費が心配・・・・という方も多くいらっしゃるのではないでしようか。
民法760条に「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」とあります。これが「婚姻費用分担の義務」と言われるものです。
夫婦には、お互いの生活レベルが同等になるように助け合う「生活保持義務」があり、婚姻費用とは日常の生活費のことで、具体的には衣食住の費用・医療費・子どもの養育費・交際費等のことです。
つまり、夫婦の場合、たとえ別居していようが「妻や子どもの生活費なんて払わない」「勝手に稼いで生活しろ」とは言えないのです。夫が生活費を渡さない場合は、妻は、今まで通りの生活費を渡すよう求めることができます。
今回のご相談は、ご主人からの婚姻費用の支払いに不安を感じる奥様からのご依頼でした。別居を決断されたご相談者様でしたが、別居理由ともなったお金にルーズなご主人の性格を考えて、しっかり婚姻費用を支払ってもらえるように、公正証書に残しておきたいというご希望でした。
今回の公正証書のポイントは、大きく分けて3つです。
別居中の婚姻費用については、様々な事情を加味して、一般的に両者の合意によって決められます。今回のご相談者様もお2人で話し合って決められました。
負担額は、ご夫婦によって千差万別ですが、参考になるものとして東京・大阪家庭裁判所が作成した婚姻費用算出表があります。この表には、収入や子どもの人数、年齢に応じて、費用が明示されていますので、ご参照いただければと思います。婚姻費用の分担義務はいつまでかについては、原則としては「別居を解消し、離婚するまで」とされています。
養育費・婚姻費用算出表
[http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf](検索日:16/03/10)
民法上では、夫婦間の約束は、第三者の権利を害しない限り、婚姻中はいつでも取消しできるとされています。けれども、夫婦関係が破たんしてからの約束は、取消すことはできません。
公正証書において強制執行を可能にする場合は、支払いについての期間の設定が必要になります。別居の場合は、いつまで別居するかわからないことがほとんどで、いつまでというのを決めるのが難しいと思います。
今回のケースも別居がどのぐらい続くのかがわからなかったものの、長期になるだろうと思われていたので、強制執行を可能な公正証書にするため、婚姻費用の支払いをお子さまが満20歳に達するまでと記載することになりました。
また、今回のご相談者様の場合、ご主人の名義の不動産(ローンなし)があり、別居後はその不動産にご相談者様とお子さんがお住まいになる予定でした。そこで、ある条件を満たしたときに(法律上のことも含め)、不動産の所有権をご主人からご相談者様に移す取り決めがなされました。
別居中の公正証書についても、それぞれの状況により内容は違ってきます。
別居中の公正証書の原案作成なら、行政書士オフィス大石まで、ご相談ください。